これまでの治療方法

これまで考えられてきた顎関節症の原因とそれに対する治療方法

 顎関節症は長い間「かみ合わせの悪さ」が原因だと考えられてきました.そのために,悪い咬み合わせの影響をなくすため,理想的なかみ合わせを与える「マウスピース」を口に入れたり,悪いかみ合わせを削って安定したかみ合わせにする「咬合調整」といった治療,あるいは良い咬みあわせにするための歯列矯正治療,ないしは歯にかぶせものをして,人工的な歯列を作る治療なども行われて来ました.しかし,このようなかみ合わせに対する治療を行っても症状の消えない患者さんが多数おられます.

 現在ではかみ合わせの悪さも小さな原因とは言えるものの,その影響は小さいことが分かってきました.逆に,歯を削るとか歯列矯正をするといった治療の場合,一旦治療を受けると,もし良くならなかった時には,元に戻せないことになります.こうしたことから,顎関節症を専門に研究する歯科医が中心となって活動する日本顎関節学会では,世界中の論文を集めて,かみ合わせを良くする治療の効果を調べました.その結果,少なくとも「歯を削ってかみ合わせを良くする」治療の効果に関しては,科学的な根拠はないという結論をえました.そこで「顎関節症の初期治療として,かみ合わせを削る治療はおこなうべきではない」というガイドラインを公表しています.

 じつは,このかみ合わせを削る「咬合調整」と「マウスピース」治療はどちらも保険診療としてみとめられています.ですから,顎関節症で悩む方が歯科を受診すると,ほぼ例外なく行われます.「マウスピース」治療に関しては,この方法でも効果が得られる方もおられますので,この治療を受けることまで避けるべきとは言いきれませんが,少なくとも顎関節症の治療として「歯を削る」治療を提案された場合は,断固拒否してください.歯を削られて良くならなかった場合には元に戻せません,場合によると水を口に入れると「歯がしみる」といった症状が出ることになるかもしれません.

 ましてや,歯列をキレイに並べる歯列矯正治療とか全ての歯を削ってかぶせものをすることで理想的なかみ合わせを作るといった治療が,顎関節症治療として提案された場合には,絶対に受け入れないでください.歯列矯正治療や全部の歯にかぶせものをするという治療が顎関節症を治すという科学的根拠はありません.