歯ぎしりによる症状にお悩みの方へ

 歯ぎしりは昔から顎関節症の悪化要因として最大なものとされてきました.また歯周病にとっても最大の問題とみなされています.そればかりではなく,起床時の頭痛や肩こりの原因になる場合もあります.歯ぎしりの原因は全てが解明されたわけではありません.おそらくは幾つかの原因があり,それらが複雑に影響しあっている場合もあるものと考えられています.しかし,一部の歯ぎしりはTCHを治すと軽くなったり,音が出なくなったりする場合もあることが分かってきました.そのことに気づいたきっかけは,顎関節症の患者さんからの報告でした.Aさんは53歳の女性です.長年にわたって顎関節症による痛みや口の開けにくさで悩んでおいででした.近くの歯科医院で作ってもらったマウスピースを使っても良くならず,逆に症状が強くなるということでした.TCHをお持ちでしたので,その是正トレーニングを行ってもらいました.その結果痛みが消え,リハビリトレーニングで口も大きく開けられるようになりました.その改善経過の中で,彼女が気づいたのは,いつも起床時に強かった口の開けにくさと開けるときの痛みが最初に軽くなっていったということでした.またしばしば起床時に頭痛を感じていたのですが,その頭痛の回数が減っていったというのです.日常の痛みが完全に消えた頃には起床時頭痛も出なくなったそうです.


 このAさんのような例はTCHを是正した患者さんによく見られます.どうしてこのようなことが起きたのかと言いますと,次のように考えられます.すなわちTCHの是正が進むと,日常生活の中で上下の歯が触ると反射で離すようになります.この無意識な反射動作が睡眠中も起こるのでしょう.日中歯をつけ続けている人は,寝ている間もずっとつけ続けますので,それによって疲労したあごの筋肉は上手く伸びることができず,口が開きにくくなる訳です.また口を閉じるときに働く側頭筋が疲労すると,それが頭痛として起床時に意識されることにもなるのです.Aさんの場合,マウスピースを入れて寝ると,逆にマウスピースを強くかみしめることになり,このことが筋疲労を強めたと解釈できます.ですからTCHの是正が進んで,無意識な反射による歯の離開ができるようになると,睡眠中でも歯を離すようになり,あごの筋肉疲労の蓄積が起こらなくなったことで,起床時の症状が改善したのだと考えられます.このように,夜間歯ぎしりによる起床時症状改善の効果がTCH是正によって得られる可能性があるのです.夜間歯ぎしりによると思われる起床時症状をお持ちの方は是非TCH是正を行ってみてください.


 ただ,この説明の初めにも書きましたように,全ての歯ぎしりの原因が分かっているわけではありません.TCHの夜間持続によるものは是正可能ですが,それ以外にも歯ぎしり原因は色々あります.そういった歯ぎしりに対して,最近は幾つかの薬物による治療が行われる場合もあります.その説明は省きますが,歯ぎしりによる起床時症状にお悩みの方は,まずTCH是正を行うことをお勧めします.この方法はマウスピースのような道具も薬も使いませんし,うまく行かなかったとしても何の障害もありません.是非お試しください.