自律神経失調症について

「自律神経失調症」という用語はおそらくどなたも聞いたことがあるでしょう.医者から告げられた方も多いだろうと思います.ただこの用語は厚労省が定めた正式な診断名ではありません.自律神経とは交感神経と副交感神経を合わせたものを総称した呼び名ですが,そのうちの交感神経の緊張が持続しつづける.あるいは,急に緊張するといったことが原因で起こる,身体各部の様々な症状に対して使われるようになった用語です.急な動悸(心臓の拍動増加),息切れ,めまいといった症状がよく取り上げられますが,それだけでなく,疲労しやすさ,各部の筋肉痛,便秘,下痢,頭痛など,人によって様々な症状が出現します.いつまでも同じような症状が繰り返されると不安になり内科医に相談するでしょうが,各種画像検査や血液検査を受けても異常が見つからないことが多く,その場合に担当医は「自律神経のバランスが崩れた,自律神経失調症でしょう」と告げるのです.

 自律神経のうちの交感神経は「闘争と逃走」のための神経と言われ,これから戦おうとしたり,敵から逃げようとするときに,体の反射機能を高め,外的変化に体をすぐに適応させるための準備をするという機能があります.具体的には心臓の拍動力を強め,血管を細くして血圧を上げるとともに,内臓に行く血液を筋肉に回すように調整します.こういった交感神経の緊張は,生物が生存するための基本的な対応力を高めるうえで重要な機能ではあるのですが,勝手に緊張すると「おやっ」と感じたり,「変だな」と感じることになります.また緊張がいつまでも持続すると筋肉や内臓器官に血流が充分行き渡らず異常を起こすことになります.

 この交感神経緊張持続という状態をTCHが作り出している可能性があります.このことに気づいたのは,顎関節症の患者さんからの報告がきっかけでした.顎関節症の治療としてTCH是正訓練を行っていただいた患者さんのなかに,頭痛,腰痛といった筋肉痛や慢性筋疲労,あるいは繰り返す便秘や下痢,慢性の胃痛や生理痛に悩んでおいでの方々がおり,TCHが是正された頃に,そういったこれまで悩んでいた他の症状が軽くなったり,消えたりしたと話されたのです.当初は「たまたま同時期に良くなっただけでしょう」と話したのですが,それ以後も同じような改善報告が続いたために,もっと真剣にこの現象を考えざるを得なくなりました.

 改善したと報告される症状は,皆さんばらばらで一定の症状と決まったものではありません.しかし幾つか共通点がありました.それは①血液検査では異常を見つけられない.②調子がいいときと悪いときがある.③特に入浴してリラックスすると症状が和らぐ.④医師から「自律神経失調症」といわれたことがある(④は全ての患者さんが内科を受診しているわけではありませんから必ずそう診断されたということではありません).といったことです.このことは自律神経のなかの交感神経が緊張を持続させる事で血流が悪くなり,その方の体の中で耐久力の低い器官が耐えきれなくなって,症状を起こしていることを示しています.そのような機序で症状が出ていますから何らかの原因で血流が改善すれば症状が和らぐはずですし,炎症や腫瘍があるわけではありませんから血液検査ではひっかからなかったわけです.

 そこでTCHです.いまご自分が履歴書のような綺麗な文書を作成する場面を想像してください.背筋を伸ばして精神を緊張させて,おもむろにペンを取り上げるでしょう.その時口は閉じ歯を軽く咬んでいると思います.このように自ら精神を緊張させようとするときには,軽く歯を噛みしめるのです.歯を噛みしめることが精神を緊張させ,そのことが交感神経も緊張させているはずです.いわば歯を噛みしめることが緊張を作り出しているわけです.ですからTCHを持っている方は,自らは意識してはおらず,また軽いものでしょうが絶えず緊張し,その緊張が交感神経を緊張させ続けていたということになります.そうであったがためにTCHを是正できると,交感神経の緊張持続がなくなり,相対的に副交感神経が活発になることで,血流が改善して症状が和らいだのです.

 

 このように,今この文章をお読みになっておられ,ご自身も自律神経失調症にお悩みになっておいででしたら,是非ご自身でTCHを持っているか否かをチェックしてください.TCHがあるならそれを是正することで楽になる可能性があります.