顎関節症について

 顎関節症という病気は,一時的なものを含めると,一生涯の間に二人に一人は経験するという,非常にポピュラーなものです.大きく口を開けられない,あるいは口を開こうとすると耳の前にある顎関節(がくかんせつ)や,あごを動かす頬やこめかみの筋肉が痛む,あるいは,口の開け閉めで「かくかく」と音がするといった症状が出ます.多くの場合は一時的に症状が出ても,そのうち自然に気にならなくなるものです.しかし中にはいつまでも良くならず,食事の不自由さが何年も続いている方もおいでです.

 顎関節症と診断するには,正式にはいくつかのキーとなる症状があります.専門家はそのような症状を目安にして,それに加えて他の病気ではないという「鑑別診断」をおこなったうえで,顎関節症の状態(病態といいます)を診断します.その結果「顎関節症」を細かく分類した「下位分類」に分けた診断名をつけます.本来であればそのようなきちんとした下位診断名をつけるべきなのです.こういった細かい診断名が必要とされるのは,診断の違いが治療方法の違いに結びついているからなのです.ただ現在のところ顎関節症の治療では,他の多くの病気とは異なり,細かい診断が実際に行われる治療方法に結びついていません.治療方法を選ぶために正確に診断するという必要がないのです.もっと正確に言うと,顎関節症を細かく診断したとして,その病態をそれがなかった正常な状態に全て戻せるという治療方法がないのです.しかし下位分類での診断名が異なっても,痛みを0にし,また口を大きく開けられないとか,硬いものは噛めないといった機能の障害をなくすことであるなら,同じ方法の治療で十分に治すことができまるようになったのです.そのため学問的には,また顎関節症という病気に対する専門家としての認識を世界中で共有するためには正確な診断が必要なのですが,実際に顎関節症に苦しむ患者さんを救済するためには,正確な診断が必ずしも必要とは言えないというわけです.

 このようなことから,顎関節症に関して専門の勉強をしてはいないという通常の開業医の歯科医や,場合によってはご自分である程度勉強された一般の方であっても,顎関節症ではないかと疑うことが可能ですし,そのような患者さんご自身が,このホームページで紹介しているようなトレーニングを行うことも可能なのです.ご自身でトレーニングを行ってみて良くなればそれで結構です.ただ1週間おこなってみて改善がないなら,やり方が間違っているか,あるいは他の病気の可能性もありますのでおやめください.もしご自身で行うことに不安をお感じになるなら,開業医や専門医に受診されてもよろしいです.あるいはこのホームページの問い合せから木野に質問していただいてもかまいません.