本来の顎関節症の症状

 以下の3つの症状のうち1つ以上があり,同じようなよく似た症状が出る他の病気は否定されたときに顎関節症と診断されます.

 

1.大きな口を開けられない(開口障害)

 完全に口が開かなくなることはありませんので,食事が取れなくなることはありませんが,典型的なケースでは指2本分の幅くらいしかあけられなくなります.そのため大きな食品の丸かじりや気持ちのいいあくびはできなくなります.

 

2.アゴを動かすと耳の前の顎関節や頬やこめかみの筋肉に痛みが出る(機能時痛)

 アゴを動かさなければ痛みは出ないのですが,口を開けようとしたり,食事で食品を咬もうとすると痛みが出ます.その動作をやめると痛みが消えるのが顎関節症の痛みの特徴です.

 

3.アゴを動かすと耳の前あたりで「かくかく」音がする(関節雑音)

 この音は顎関節症に特有なもので,顎関節内部の構造が変形することでアゴを動かすときに発生します.

 

 これらの症状は多くの場合一時的なもので,治療しないで様子を見ていると消えてしまうことが多いのです.また,3の関節雑音だけで他の症状がないなら治療の必要はありません.雑音を消すには手術以外に方法はなく,そこまで行うべきではないというのが顎関節症の専門医の見解です.

 

 ところが,1の開口障害が何年経っても残っている方がいます.たとえ顎関節症に対する治療を受けなくとも,時間経過によって徐々に口の開く幅は増えるのですが,完全には元通りにまで開くようにならないという方です.このような方は,ふだんは不自由を感じることなく食事や会話ができるのですが,体調が悪化したり,急に寒くなったりすると,口の開く幅が狭くなります.同時に2の機能時痛も強まります.体調が元に戻ると,また口の開く幅は広がるのですが顎関節症になる前の状態には戻りません.このような状態にある方とは,じつは顎関節症が完全には治っていない方なのです.このような方の顎関節症をわれわれは「かくれ顎関節症」と呼んでいます.この状態にある方たちは,ご自分で食事やあくびの仕方を工夫されています.硬いものは食べないとか,あくびはかみ殺して大きくは口を開けないとかされています.いわば,不自由を抱えご自分で生活の質を落として暮らしておられるのです.これまで行われていた治療では,このような方々の症状を完全に消すことができませんでした.そのため,私自身も患者さんに対して「これ以上は良くすることができません.あとはご自分の関節と上手につきあって暮らしてください」と患者さんを突き放していたのです.しかし今では完全に症状を消すことが可能になっています.