TCHが起こす歯科的な問題(100歳までおいしく食べよう.TCHコントロール)

 顎関節症を起こす最大の原因としてTCHを見つけたのですが,実は顎関節症だけでなく歯科のさまざまな問題にも関係していることが分かってきました.それについてご説明します.

 

 1.入れ歯(とりはずし式の入れ歯)を入れて食事すると痛い.

 入れ歯をお使いの場合,食事と食事の間でも入れ歯の下の歯肉は骨と入れ歯にはさまれていますから,TCHがあると入れ歯の歯肉に触れる面が押されることで歯肉が軽く圧迫されます.その圧迫によって血管が狭くなり血液の供給が悪くなると,丁度正座していて足がシビレルのと同じで,痛みに敏感になります.その状態で食事をすると,かむ力によって歯肉はさらに負担を受けますから歯肉の中にある敏感になっていた神経が刺激され「食事をすると痛い」ということになります. とくに総入れ歯の場合,TCHがあると痛みだけではなく,その圧迫によって骨そのものがやせていきます.骨がやせると入れ歯の安定が悪くなり,新しく作り直してもうまくかめないという問題が次第に大きくなります.

 TCHがなくなれば,食事と食事との間で入れ歯を押すことがなくなるので,神経が過敏化しなくなりますから,食事での痛みが消えるはずです.

 

2.原因が見つからないのに咬もうとすると歯が痛い.知覚過敏がある.

 歯科医の診察を受けても,むし歯はない,歯周病もない.エックス線撮影検査でも異常を見つけられないのに,咬もうとすると歯が痛い.という症状が出ることがあります.また,冷たい水がしみるという知覚過敏の症状で受診しても,歯科医の診察では原因が分からない場合もあります.このようなときは,最初にTCHの存在を疑うべきです. TCHがあると,絶えず歯をかんだ状態にあるため,歯と骨との間にある歯根膜が圧迫されて狭くなっています.この状態になると上に述べた歯肉と同じように血管が圧迫されてせまくなり,血液供給が低下するために,歯肉と同じく歯根膜の神経が痛みに敏感になります.こうなると弱い咬む力でも痛みを感じてしまいます.同じように歯根膜の神経が敏感になっていますから,冷たい水などを口に入れると知覚過敏で「ツン」としみる場合もあります.

 多くの方の場合,夜間寝ている間も上下の歯を咬んだままにしていますから,朝起床時が最も血の巡り悪い状態になっているはずです.そのために歯が敏感になり,ちょっと触っても痛いとか,冷たい水が染みるといった症状が出ます.

 TCHがなくなれば歯を押し続ける行動がなくなりますので,歯根膜の血流を正常に保つことでそのような過敏感覚がなくなるはずです.TCHが是正されると,寝ていても「歯が触ったら離れる」という動作が無意識の反射で起こるようになりますから,起床時症状もなくなることになります.

 

3.歯周病の悪化

 歯周病が進むと歯が横に揺れるようになります.もっと進行すると上下にも動くようになります.上下動が始まるとかむ時の痛みが出始めますから,その歯ではかまないようになります.そしてこの段階まで悪化すると,元の揺れのない状態に戻すことは非常に困難になります.最悪の場合は痛みを取るために抜歯となるでしょう.このような歯周病を進める最大の原因がTCHにあると考えられます.

 TCHがあると上下の歯がかんだままの時間が長く続きます.その間に首を回したり頭を傾けたりすると下顎が左右や前後に少し動きます.そのときかんだままになっている歯を揺らすことになります.これを長い間繰り返すことによって,ちょうど地面に打ち込んだ杭を抜くために左右に揺らしていくときのように,歯の動きがまわりの骨を少しずつ破壊することになり,歯のまわりの歯周ポケットを深くしていきます.そうなるとポケット内部にすむ嫌気性菌が働きやすくなり,歯周炎を悪化させ,それがまた周囲の骨を破壊するという悪循環を作り出し徐々に歯周病を進めるのです.

 TCHがなくなれば,あとは歯科医院での歯周病ケアを定期的に受け,歯ブラシをうまく使うことで歯が長持ちしますから,100歳になっても何でも美味しく咬めるでしょう.

 

4.歯のつめもののはがれおちや歯のかぶせもののはずれ

 TCHがあると絶えず歯を咬んでいますから,つめものには余計な負担がかかります.しかもかみ合せでつめものを押す位置にかたよりがあると,つめた金属などがはがれおちやすくなります.また歯にかぶせ物や差し歯をしている場合.同じようなかたよった負担が続くことで,そのような修復物もはずれやすくなり,修復物の使える期間を短くし,再治療が必要になります.

 TCHがなくなれば,治療したつめものやかぶせものが長持ちしますので,医療費の節約になります.

 

5.歯がしばしばかけたり割れたりする.

 むし歯を治療でけずったあとに,金属などをつめることは歯科治療ではよく行われます.ただ,むし歯が大きい場合にはつめものが大きく,残った元々の歯がつめもののまわりに薄く残るだけになることがあります.このような治療を受けた方がTCHを持っていると,そのような歯に絶えずかみあわせやそしゃくの力がかかりますから,残った歯の部分が欠けやすく,ひどい場合には歯の根を含めて歯全体が割れることもあります.また前歯の治療で瀬戸物を金属に貼り付けた「陶材焼き付け冠」という治療を受けた方では,TCHがあるとその前歯の瀬戸物部分が欠けやすく,しばしば作り替えが必要になります.

 TCHがなくなれば,歯が割れる危険性が減りますし,高額な治療費を必要とする「陶材焼き付け冠」の再治療を防ぐことにもなるでしょう.

 

6.舌や頬の粘膜を食事中に間違ってかんでしまう

 日中,長時間にわたってTCHを行っている人は,夕方になる頃にはあごを閉じる時に使う筋肉の咬筋(こうきん)や舌を動かす筋肉の舌筋(ぜつきん)が疲れ切っています.この状態で夕食を始めると,食物を咀嚼するときに咬筋や舌筋が疲れていてスムースに動かせず,頬や舌の粘膜がうまく逃げられないために舌や頬粘膜をかみこんでしまうことがあります.

 TCHがなくなれば舌筋や咬筋が疲労しにくくなりますから,間違ってかんで痛い思いをすることが減るはずです.

 

7.慢性口内炎や再発性口内炎

 TCHがあると舌は口の中の口蓋と呼ぶ天井部分や周囲の歯列に押しつけられています.頬の粘膜も,その外側の咬筋とよぶ口を閉じる筋肉が緊張していることから,かみあわせた歯列に押しつけられています.この圧迫によって粘膜表面のすぐ下では血流が悪くなります.このような状態で食事中に間違って舌や頬をかんでしまうと,その外傷をきっかけに口内炎が始まります.口内炎があると食事中に痛みがあり,食欲も減退してつらいものです.しかもその口内炎は,押しつけられていて血流が悪いために治癒が遅れます.さらにそのような緊張の持続は唾液の分泌も悪くするため,口内炎をさらに悪化させて慢性化させることがあります.または一旦良くなってもまた繰り返す例もよくみられます.

 TCHがなくなれば間違って咬む,あるいは舌や頬の粘膜の押しつけがなくなるので,慢性の口内炎や繰り返しの口内炎が消えて食事が楽になるでしょう.

 

8.舌痛症(ぜっつうしょう)

 中年以降の女性に多いのですが,「舌がぴりぴり痛い」とおっしゃる人がいます.歯科医がみても舌の表面には傷や炎症などの異常はみつけられません.そのために「気のせいです」と言われて,歯科医院から追い返させられる事があります.このような方が最初に疑うべきなのがTCHです.TCHがあると,舌を動かすための舌筋が緊張して,上に述べたように口蓋や周囲歯列に舌を押しつけています.この押しつけによって,舌粘膜のすぐ下の血流が低下し,正坐による足のしびれと同じように感覚過敏が起きます.その結果,舌に「ぴりぴり」した痛みを感じることになります.

 TCHがなくなれば,よけいな舌の押しつけがなくなりますから,舌表面の血流も正常に維持されて「ぴりぴり」が出なくなります.